読書メモ『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子 

在宅医療

読書メモ『エンド・オブ・ライフ』佐々涼子(集英社)

2020年の「Yahoo!ニュース|本屋大賞ノンフィクション本大賞」を受賞した、佐々涼子さんによるノンフィクション。

看取りの実践者である看護師が、自らもがん宣告を受け、「命の閉じ方」を作者との語りを通して伝え、終末医療のあり方を問うノンフィクション。

・・・ということなんですが、それがノンフィクションらしくないのです。文体が文学的で、ひとつひとつの場面がいきいきと目の前に立ち上がってくるようです。

叙述のスタイルもノンフィクションらしくありません。時系列ではなく、ふたつの時間の軸に沿って並行して語られるという構造になっています。

戸惑いつつもふたつの時間軸の間を行きつ戻りつしながら読みすすめると、さまざまな家族の物語が織り込まれたタペストリーが目の前に広がっていく。そういう読書体験でした。

末期がんを宣告された訪問看護師、森山文則さんとの対話が縦糸。2018年から2019年にかけての出来事が語られます。

そして横糸は、その6年前に佐々さんが取材した終末医療の現場での出来事です。終末期を迎える患者やその家族、在宅医療の現場を支える医師や看護師の姿が丁寧に描かれています。

さらに縦糸には、難病を抱える佐々さんのお母様の在宅療養の様子がところどころに織り込まれています。愛する妻を心を込めて介護するお父様も登場します。

つまり、作者である佐々さんも当事者のひとりであり、紡がれる物語の登場人物であるということです。

これもまた、ノンフィクションらしくない理由です。そのようなノンフィクションらしくないところが、この作品を魅力的にしています。

この作品は、いわゆるお涙頂戴の闘病ものや感動ポルノといわれるものとは一線を画しています。だから、「今年いちばん泣けた本」などと書かれた帯は似つかわしくありません。

美しい装丁に彩られ、亡くなった人たちを偲び、祈りを捧げるような、愛に満ちたノンフィクションでした。

《追記》でもね、やっぱり在宅医療についてつきまとう疑問が、ここでも拭いきれないんですよ。例えば、「いつ電話してもすぐに来てくれて、まるでドアの前で待機しているのではと思ったくらい」と、患者が森山さんについて語る場面があります。常に待機状態という働き方は、個人にかなりの負荷をかけるものではないのかという、疑問です。

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